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096 怯える者の武器

ผู้เขียน: 栗須帳(くりす・とばり)
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-08-18 17:00:43

「はあ……」

「はあ……」

 あおいと菜乃花が、食堂のテーブルで洗濯物をたたみながら、同時に大きなため息をついた。

 そのタイミングのよさに二人、顔を見合わせて笑った。

「なんですか菜乃花さん、大きなため息でした」

「あおいさんこそ、ふふっ……」

 * * *

 節子が越してきて、一週間が経っていた。

 彼女との邂逅は二人にとって、あまりに衝撃的なものだった。

 このあおい荘で介護の世界に触れ、憧れた。

 人の為に働くことの喜びを知った。

 勿論、楽しいことばかりではない。

 辛いこともたくさんあった。哀しい出来事も多く経験した。

 慣れない仕事に、体中の筋肉が悲鳴をあげることもあった。

 でもそんな中で、彼女たちはひとつのことを学んだ。

 ――真剣に向き合えば、必ず分かり合える。

 それは直希から学んだことだった。

 彼女たちはそのことを信じ、頑張ってきた。

 菜乃花に至っては、介護の問題ではなかったが、学校で自身をいじめてきた吉澤玲奈との和解が、その言葉に確信を持たせていた。

 あおいもここでの生活を通じて、いつか父とも分かり合える時が来る、そう思えるようになっていったのだった。

 しかしここに来て、彼女たちはその言葉が間違いないのだろうかと、疑問に思うようになっていた。

 大西節子。

 彼女が来て一週間になるが、あおいも菜乃花も、全くコミュニケーションを取れずにいた。

 節子は四六時中、直希にしがみついていた。

 直希が何を言っても、何を聞いても「そばにいて、そばにいて」と連呼するだけ。彼女が何を思い、何を望んでいるのか、全く分からない状態だった。

 おかげで直希は、仕事らしい仕事が出来なくなっていた。

 いつも節子がくっついているので、満足に話も出来ない。

 いつもなら疑問に思うこと、悩んでいること
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    「はあ……」「はあ……」 あおいと菜乃花が、食堂のテーブルで洗濯物をたたみながら、同時に大きなため息をついた。 そのタイミングのよさに二人、顔を見合わせて笑った。「なんですか菜乃花さん、大きなため息でした」「あおいさんこそ、ふふっ……」 * * * 節子が越してきて、一週間が経っていた。 彼女との邂逅は二人にとって、あまりに衝撃的なものだった。 このあおい荘で介護の世界に触れ、憧れた。 人の為に働くことの喜びを知った。 勿論、楽しいことばかりではない。 辛いこともたくさんあった。哀しい出来事も多く経験した。 慣れない仕事に、体中の筋肉が悲鳴をあげることもあった。 でもそんな中で、彼女たちはひとつのことを学んだ。 ――真剣に向き合えば、必ず分かり合える。 それは直希から学んだことだった。 彼女たちはそのことを信じ、頑張ってきた。 菜乃花に至っては、介護の問題ではなかったが、学校で自身をいじめてきた吉澤玲奈との和解が、その言葉に確信を持たせていた。 あおいもここでの生活を通じて、いつか父とも分かり合える時が来る、そう思えるようになっていったのだった。 しかしここに来て、彼女たちはその言葉が間違いないのだろうかと、疑問に思うようになっていた。 大西節子。 彼女が来て一週間になるが、あおいも菜乃花も、全くコミュニケーションを取れずにいた。 節子は四六時中、直希にしがみついていた。 直希が何を言っても、何を聞いても「そばにいて、そばにいて」と連呼するだけ。彼女が何を思い、何を望んでいるのか、全く分からない状態だった。 おかげで直希は、仕事らしい仕事が出来なくなっていた。 いつも節子がくっついているので、満足に話も出来ない。 いつもなら疑問に思うこと、悩んでいること

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